MovableType 5 になってから追加された機能にウェブサイトがあります。ウェブサイトは、複数のブログ形式のコンテンツを持つサイトにおいて、それらのプレースホルダ的に機能するため、中~大規模サイトの運用がよりシステマティックに行えるようになりました。しかし、このウェブサイトには、従来の MovableType 4 までの進化からすると、少しばかりの違和感を憶えざるを得ません。
MovableType では、ブログ記事はカテゴリ(category)に含めることができます。そして、このカテゴリは更にカテゴリ(サブカテゴリ)を含むことができ、全体としてカテゴリはツリー構造を持ちます。MovableType 4 になって追加されたウェブページについて見ると、ブログ記事と同様に、ウェブページはフォルダ(folder)に含めることができ、フォルダについてもカテゴリ同様にツリー構造を持つことができます。このように、カテゴリやフォルダは、コンテナ(container)としてブログ記事やウェブページのようなエンティティ(entity)を、また、コンテナ自身を保持することができるという点で非常に似通っています。実際、MovableType ハッカーにしてみれば、両者が同じデータ構造を持ち、データベースのテーブルを共通にすることは既知の事実です。
カテゴリとフォルダは、その中に含めることのできるエンティティに少しの違いはあるものの、それらがツリー構造を持つという点において相似形を成していると言えます。
MovableType 5 では、ブログは必ず一つのウェブサイトに含まれなければなりません。ブログはブログ自身を含むことはできず、また、ウェブサイトに含まれないブログも作れません。ブログは必ずウェブサイトをルート(根)とするツリー構造になります。それもたった一階層の。
カテゴリとフォルダ、そしてブログは全く異なるものですが、ツリー構造を持つという点で、それらの設計に相似形を見出すことは難しくありません。しかしながら、MovableType 5 はブログの入れ子をわざわざ一階層に強制したのです。なぜ独立したブログが作れないのか? なぜウェブサイトの中にウェブサイトを作れないのか? そもそもブログを自由に入れ子にできるようにするだけでよかったのではないか? このカテゴリとフォルダ、ブログの成す相似形の崩れに違和感を憶えるのです。
MovableType では、プラグインによってその機能を拡張し、またある時には標準の機能や動作さえも上書きしてしまうことが可能です。しかし、このウェブサイトとブログの不自然なツリー構造は、ソースコードの奥深くに根差しており、プラグインを以てしてもどうしようもないものです。嗚呼、MovableType は、ユーザの自由とともに設計の美しさも失ってしまったのか!
ツールとして、ユーザの自由は最大限にして欲しいというのがあります。MovableType 5 になって、できることは増えたはずなのに、とても狭く感じる。自由度が高すぎてユーザが混乱するなどの理由で、制限することのメリットもあるのは事実ですが、ウェブサイトとブログの制約は、単に MovableType の可能性にわざわざ理不尽な上限を自ら設け、ユーザの自由なサイト構築を妨げるだけのものでしかないと感じています。